ここでは、外国為替に関する解説書や外国為替に携わっている人たちが著述した古今の 書籍を、筆者の書評を添えて紹介します。 ただし、筆者の評価や書評は、あくまで一読者の個人的な意見であって、むやみにその 購入を勧誘するものでも、その内容を誹謗・中傷するものでもありませんので、 あらかじめご了承ください。 (評価について)
NO.6
タイトル
投資で勝つ最強の心理法則
〜スーパートレーダーならこう考え、こう行動する。〜 総合評価
★★★
著者
板垣 哲史
価格
★★★
適量度
★★★
出版社
オーエス出版社
役立つ度
★★★
読み物度
★★★
価格
1,600円(税抜き)
オリジナリティ
★★★★★
読みやすさ
★★★★
読んだ版
2000年2月発行初版
今どき度
★★
長寿度
★★★★
総評この本は、タイトルにもあるように、投資行動を行う上での心理面に着目し、投資家のあるべき心構えを示したものである。
冒頭からいきなり性格テストのような問題があり、これを解説する形で、投資で勝つための心理面での必要条件が記されていくのもユニークである。多少、後の解説を読むと、この性格テストの中には極端すぎる印象を受ける設問もあるのだが、確かに実際のトレーディングの際に直面しそうな行動パターンが類型化されており、現役トレーダー、企業の財務担当者、これから金融トレーディングの分野を目指す人々にとっては自分がその分野に向いた性格かどうかを試してみるのも良いのではないだろうか。
このような投資家の心理状態を記した書としては、既に田中泰輔氏(現クレディ・スイス・ファースト・ボストン銀行 為替ストラテジスト)著の「マーケットはなぜ間違えるのか」(東洋経済新報社刊、いずれここで紹介する予定)があるが、この田中氏の書がどちらかというと、この投資家の心理面から、市場や相場の動向に与える影響を分析し、金融市場分析や予測の一助としているような印象を受けるのに対し、この本では純粋に投資で成功するための必要条件としており、ごく一般的な読者にも読みやすく、より実用的な形になっている。
また、途中にある「Coffee Break」の内容もトレーダーのウラ話として、けっこうおもしろく読めるし、随所に書かれているスーパートレーダーの逸話も彼らの凄さの一端を垣間見ることができて、大変興味深い。
さらに、株や為替の取引は、ギャンブルと同じと考えている人が多いが、この本はこの点について、明確にその違いを示したことも特筆すべき点であろう。
PART3のスーパートレーダーの条件については、良く読めば、トレーディングに携わる者にとっては、至極当然のことが書かれており、特段目新しいことでもない。しかし、マスコミ等の報道が、実はトレーダーが着目している事柄のごく一部だけに偏っており、重要な視点が欠けているケースがある点を指摘していることは注目に値する。
ただ、テクニカル分析に携わる者として私が残念に思うのは、P188〜194のフィボナッチ数列とエリオット波動理論に関する著述である。ここでは、フィボナッチ数列を構成する各数値間の比率を「黄金分割比率」として紹介しているが、この本自身が記しているように、黄金分割比率はフィボナッチがこの数列を紹介するはるか前の紀元前に、既にエジプトやギリシャで活用されており、このような表現は正確ではないように思う。(黄金分割比率は、特定の長さの線分を中央以外の位置で最もバランス良く感じるように分割するための比率であって、正方形以外で最もバランス良く感じるような長方形の縦横の比率でもある。紀元前より秘伝として伝えられてきた。算出方法はここに記載)つまり、黄金分割比率が先にあって、フィボナッチ数列にもこの比率が存在しているというべきではないだろうか。確かに、歴史的建造物やルネッサンス期の絵画、自然界にもこの比率は存在しているのだが、この本のような表現で黄金分割比率に神秘的な印象を与えることは、市場には何かこの数値に支配された神秘的な力でもあるかのような誤解を招く危険があり、この本自身の主張とは相反する気がしてならない。単に多くのトレーダーが売買のタイミングを測る目安として、この数値を使っており、エリオット波動理論がその背景にあると言う程度の紹介でも良かったとも思える。
しかし、こうした多少気になる点はあるとはいえ、トレーダーの心理面に着目し、これを体系化して適性テストという形で表現し、投資行動への必要条件として前面に押し出してきている点が、投資に関するあまたの「HOW TOもの」の本との決定的な違いであろう。
冒頭でも述べたように、現役トレーダー、企業の財務担当者、これから金融トレーディングの分野を目指す人々にとって、自らの適性を測ると共に、日頃の心構えを学ぶ上で、一読の価値がある書と言えよう。