ここでは、外国為替に関する解説書や外国為替に携わっている人たちが著述した古今の 書籍を、筆者の書評を添えて紹介します。 ただし、筆者の評価や書評は、あくまで一読者の個人的な意見であって、むやみにその 購入を勧誘するものでも、その内容を誹謗・中傷するものでもありませんので、 あらかじめご了承ください。 (評価について)
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タイトル |
決定版儲かる米ドル預金 プロが実践する外貨資産運用法 |
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総合評価 |
★★★★ |
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著者 |
板垣 哲史 |
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価格 |
★★★★★ |
適量度 |
★★★ |
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出版社 |
マネジメント社 |
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役立つ度 |
★★★★★ |
読み物度 |
★ |
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価格 |
1,400円(税抜き) |
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オリジナリティ |
★★★ |
読みやすさ |
★★★★★ |
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読んだ版 |
1998年 2月発行初版 |
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今どき度 |
★★★★ |
長寿度 |
★★ |
タイトルにもあるように、主に個人向けに外貨資産の運用について指南している本である。2部構成になっており、第1部は、米ドル預金の有用性を説くと共に様々な資産運用手法を紹介しており、第2部は、そのような金融取引をする上での哲学を論じている。
まず第1部であるが、今年4月1日からの外為法改正に絡んで、外貨資産運用に関する書籍が大量に販売されており、その多くが改正後何がどう変わり、どういうメリットがあるかを説明した後、「しからば」という形で資産運用法を紹介していく方式を採っているのに対し、この本では、そのような”能書き”は第2部の冒頭に述べられているだけで、法改正とは無関係に米ドルがいかに有利かを説いた上で、その資産運用手法が書かれている点がユニークである。また、多様な資産運用手段をかなり詳細に紹介しており、金融機関の電話番号等はもちろん、手続きに必要な物事まで書かれているため、後は金融機関の窓口に出向くだけといった感もあり、大変実用的で便利と言える。しかも、この手の本には得てして特定の金融機関の宣伝めいたものも多いのだが、この本は著者の出身であるシティバンクに限らず、他の金融機関も公平に紹介されている点に好感が持てる。特に、外貨資産運用法の紹介と言うと、短期で金利収入よりもどちらかというと為替差益を狙うものも見受けられるのに対し、この本はこれには否定的で、一般個人レベルでは為替相場でサヤを取るのは困難であり、米ドルの高金利に着目すれば、運用期間が長くなるにつれて金利収入が増大し、やがては為替相場の変動リスク分をカバーしていけることを主張しており、かつ実数でそれを示して長期運用を推薦している点に特徴がある。ただ、冒頭で為替相場の動向が円安に進むことを予想しているため、円高に向かった場合のリスクに関する記述が乏しく見える上に、この長期運用による円高リスクの軽減効果という主張が見えにくくなる懸念は感じざるを得ない。
第2部は、全体の1/3ほどを占めるに過ぎないが、実はここがこの本の神髄であろう。実用性主体の第1部から一転して、金融哲学ともいうべき著者の主張が述べられている。外為法改正後の変化も述べてはいるものの、現行の金融制度や金融機関のあり方に対する批判もなされており、その的確さには改めて感服せざるを得ない。特に、お金でお金を再生産するいわゆる資金運用という行為は、資本主義下ではごく当然の行為であって、そのための金融制度・市場の整備の必要性と共に、日本人のもつ「(金融取引等で)お金を儲けることは何か汚くやましいもの」という”偏見”や貧しさに感じる美徳といったものを改めるべきという主張は、今後の金融ビックバンの進展に伴い、個人の金融に対する意識改革を促している点で一読の価値がある。単なる資産運用の指南書というだけでなく、「金融」に対する啓蒙の書とも言えるだろう。