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 ここでは、外国為替に関する解説書や外国為替に携わっている人たちが著述した古今の
書籍を、筆者の書評を添えて紹介します。
 ただし、筆者の評価や書評は、あくまで一読者の個人的な意見であって、むやみにその
購入を勧誘するものでも、その内容を誹謗・中傷するものでもありませんので、
あらかじめご了承ください。           (評価について)

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NO.7

タイトル

為替を動かすのは誰か

〜21世紀の為替問題と日本〜

総合評価

★★★

著者

加藤 隆俊

価格

★★★★

適量度

★★★★

出版社

東洋経済新報社

役立つ度

★★★

読み物度

★★

価格

1,600円(税抜き)

オリジナリティ

★★★★

読みやすさ

★★

読んだ版

2000年9月発行初版

今どき度

★★★★★

長寿度

★★★


総評

 この本は、元大蔵相(現財務省)国際金融局長であり、財務官でもあった著者が、その経験や各種のデータから、円に対する通貨としての評価と、外国為替取引の特徴、さらにはこれに対する政府当局の役割について考察した本である。

 全般に言えることとして、さすがに大蔵省出身の元官僚だけあって、様々な現象に対して、数々のデータを駆使して考察を加えており、得られた結論にもそのような数値の裏付けがあるから、説得力がある。

 第1章の円高と日本経済の関係を見ても、円という通貨の変動が実際には他に比べてかなり大きかったことや、日本におけるマクロ経済に占める貿易のウェイトは他国に比べて高いとは言えず、海外生産比率も米独を下回っていることなど改めて驚かされた。

 また、東京外国為替市場の説明にしても、多くの外国為替関連の書籍が採るような方式ではなく、現役為替ディーラーとの対話形式を採用するなどの特徴を出している。

 特に、後半はこの本の真骨頂というべきであろう。固定・変動為替相場制度や為替市場への通貨当局の介入については、多くの書籍がその制度の定義や方式を述べる程度に留まっているのに対し、この本はデータを駆使して、その為替相場の制度や介入の有効性について、深い洞察が施されている。円相場が大きく変動すると介入の話がすぐに政治家やマスコミの間で賑わうようだが、市場介入の有効性について書かれた第4章は、ぜひともマスコミや通貨当局者に読んでもらいたい。

 巻末では、円の国際化を含めた日本の進路への提言がなされている。単なる通貨政策のみならず、日本の経済構造の改革に向けての提言となっており、それまでの優れた考察から導かれた結論であり、納得させられる。21世紀の日本経済を考える上で、一読の価値があろう。

 しかし、このようなデータを駆使した著述は、どうしてもアカデミックにならざるを得ず、経済学や外国為替にあまり関わりがない人にとっては、どうしても読みづらいものとなってしまうのが残念でならない。ただ、各章毎に書かれている野次馬BOXは、さすがに国際金融市場に対する政府当局者の1人であった著者だけに、各国政府の通貨当局の裏側やシミュレーションなどがあり、難解な著述の中にある一服の清涼剤として、愉快なものが多く、とてもおもしろい。

 どちらかというと、実用書というより、学術書としての印象が強く、実際に外国為替取引でトレーディングする人たちよりも、政府当局者やマスコミ、企業経営者の方々にぜひとも読んでいただきたい書である。