ここでは、外国為替に関する解説書や外国為替に携わっている人たちが著述した古今の 書籍を、筆者の書評を添えて紹介します。 ただし、筆者の評価や書評は、あくまで一読者の個人的な意見であって、むやみにその 購入を勧誘するものでも、その内容を誹謗・中傷するものでもありませんので、 あらかじめご了承ください。 (評価について)
NO.5
タイトル
秒変の世界に生きる
〜為替ディーラーと共に30年〜
総合評価
★★★
著者
大田 滿穂
価格
★★★★
適量度
★★★
出版社
日本経済評論社
役立つ度
★★
読み物度
★★★★★
価格
1,300円(税抜き)
オリジナリティ
★★★★
読みやすさ
★★★★★
読んだ版
1992年3月発行初版
今どき度
★
長寿度
★★★★
総評この本は、1955年以来40年余りにわたり、大手米銀で外国為替に携わってきた著者が為替に携わる人々の参考として著したものである。外国為替ディーラーが著す書籍というと、外国為替市場の歴史や構成、取引方法やディーラーという職務の詳細、為替相場の分析手法など、得てして解説めいたものになりがちであるが、この本はそのような説明的な部分はほとんどなく、著者の長年の経験からくるディーラーという者の生き様というか、処世訓のような内容が綴られており、少しばかり異色の存在である。このため、私も初めて読んでから既に7年になろうというのに、妙に印象に残っており、あえてこの場で紹介したい。
まず、解説書ではないがゆえに、難解な記述はなく、平易でかなり読みやすい。いくつかの章に分かれてはいるものの、各々はほぼ独立した内容で、ほとんどは見開き2〜3ページにまとめられているため、市場で値動きが乏しい時や仕事の合間のちょっとした息抜きとしても読めそうな気もする。内容もちょっとしたユーモアに富んでいて、相場の”カン”づくしやディーラー独特の行動、現行の行政を揶揄したものなど、為替に携わる者が読めば、おもしろおかしく読むこともできるので、カスタマー・ディーラーが顧客との話題に困ったときにも使えそうである。
しかしながら、解説書のような論理的な記述が見あたらないとはいえ、各章に書かれている内容はどこか教訓めいている。例えば、「ディーラーに必要なのは『顔と知識と経験』」とか「待つも為替」など今日でも充分あてはまることもあり、「毎日が1年生」「零が満点」といった為替意外の分野にも通じる意見も書かれている。さらには、年功序列や終身雇用の崩壊、電子ブローキングが主流を占めるといったことなど、最近に起きてきたこともこの時点で既に記されている。この他、「"speculation"は『投機』ではなく、『観機』なり」など考えさせられる部分も数多い。各章のタイトルは、いわばその象徴的表現であり、著者の経験から導かれた、決して古びることのない為替ディーラーのための進言、金言集といった趣も感じられる。
外国為替に関わる人にとっては、至極当然のこともあろうし、読んだからといって別段新しい知識を得られるわけでもない。既に出版から7年が経過してしまっており、書店の店頭で見つけることすら困難かもしれない。しかし、外国為替に携わる人にはデスクの片隅にでも置いて、時折眺めてもらいたい希有の書である。