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 ここでは、外国為替に関する解説書や外国為替に携わっている人たちが著述した古今の
書籍を、筆者の書評を添えて紹介します。
 ただし、筆者の評価や書評は、あくまで一読者の個人的な意見であって、むやみにその
購入を勧誘するものでも、その内容を誹謗・中傷するものでもありませんので、
あらかじめご了承ください。           (評価について)

タイトル

市場の神々

為替ディーラーの光と陰

総合評価

★★

著者

堀内 昭利

価格

★★★★★

適量度

出版社

株式会社ゼネックス

役立つ度

★★

読み物度

★★★

価格

1,900円(税抜き)

オリジナリティ

★★★

読みやすさ

★★★

読んだ版

1997年12月発行初版

今どき度

長寿度

またも、著者から書評をお読みいただいたとのご返事をいただきました。特にご紹介するようなコメントはございませんが、このような個人的な意見にも耳を傾けくださる著者の寛大さに、この場を借りて感謝の意を示したいと思います。


総評

 著者は、BHF銀行の東京支店長であり、東京外為市場で最古参のディーラーという経歴とそのタイトルから、その内容にかなり期待していたのだが、期待はずれに終わった感がある。「為替ディーラーの光と陰」というサブタイトルを見て、為替ディーラーがディーリングする上での心理状態や様々な葛藤、大きな利益や損失を出した時のプロセスなどが克明に記されてものと思いきや、一部にそのような記述が見受けられるだけで、時折「何月に〜千万円の黒字」といった記録がなされているに過ぎない。年代記のように各年ごとのできごとがタイトル付きで語られていく編集はユニークだが、各々記されている内容が度々あらぬ方向に展開していくため、著者がいったい何を言いたいのかがほとんど印象に残らない。しかも、自伝形式を取っているが故に「為替ディーラーの光と陰」というより、「為替ディーラー一代記」といった方が正確で、後半になってくると為替ディーラーとしてではなく、外銀の東京支店長としての記述が多くを占めるようになってしまっている。書籍全般が著述というより著者の独白の記録のようで、とりとめのない書き方のために書籍全体が400ページを超える大著になってしまっている。

 様々な記述の中には、大蔵省等の官公庁、邦銀や日本経済のあり方などへの鋭い指摘や提言、様々な金融機関の実像や特定の金融取引の実体も記されており、あとがきにある若いディーラーやディーラーを目指す人たちへの提言などもあって、優れた部分も多いだけにその著述スタイルが惜しまれる書である。



こだわりのコメント

・第1章について

 著者は、東京外為市場の発展の推移を分かってもらうための自伝形式を採用したそうだが、それならこの章のように、著者の生い立ちや学生時代の経験、為替ディーラーとしてスタートするまでの課程に何もこれほどページを割く必要はなかろう。外為ディーラーとしてスタートした時からでも充分な気がするし、為替ディーラーの生の声を期待して読んだ者としては、ちょっと興味がそがれてしまうのである。

・旧日本海軍に関する記述

 この本の中でも述べられているように、著者は旧日本海軍大好き人間らしく、これに関する記述が時折現れる。確かに、戦記物は企業経営や組織のあり方、リーダーシップといった点に共通点が多く、今もビジネス書に採用されることが多々ある。為替ディーラーとて無縁とは言えない。しかし、具体的な司令官の名前まで出し、2ページ余りにもわたって詳述する必要があるのだろうか(P.242〜P.243)。著者も若干触れているが、旧日本軍が持っていた集団主義による無責任な体質、適材適所より年功や先任が重視された年功序列、現状認識が甘くて無謀な作戦を強行した後に結局”玉砕”していくなどといった体制が、現在の日本の企業においてもほとんど変わっておらず、またも悲惨な結果を招きつつあることをもっと明確に示す方が良かったように思えてならない。

・ヤクザ映画についての記述(P.184〜P.185)

 著者はまた東映のヤクザ映画のファンらしく、勤務先の自室に「極道の妻たち」シリーズのポスターを貼っていたとまで書いている。確かに、著者のヤクザ映画への思い入れは伝わってくるが、この本の内容とは特に関係なく、これまた2ページにもわたって、著者自身のこだわりが書かれているに過ぎない。もう少し簡単に済ませても良かったのではないだろうか。

・凄腕ディーラーのコメントについて(P.272〜P.277)

 この部分は、わざわざバックをグレーにして、敏腕ディーラーに対する問答集が書かれており、21項目ある。著者のいうとおり、とても優れたコメントで、含蓄のある内容である。400ページを超えるこの本の中でぜひ読むべき部分である。残念ながら、これは別の書籍「マーケットの魔術師」からの引用で、カッコ書きで書かれている著者の余計なコメントがなければ、もっと良かったろう。

・若いディーラー、ディーラーを目指す人たちへのアドバイスについて

 著者は、あとがき(P.410〜P.413)のところで、25項目にわたる忠告を綴っている。さすがに20年以上も外国為替に携わってきた著者の言葉だけに説得力があり、しかも、ディーラーだけに限らず、ごく普通のビジネスマンにも充分あてはまるものが多い。上記の凄腕ディーラーのコメントと合わせ、この本の中でも特に秀でた部分であり、切り取って別途人生訓として置いておきたい気にさせる。

・「この本を読んで文句や批判をしたい人もいるだろう。しかし、そんなことを考えているなら、日本の将来と自分の将来のことを考えたまえ。」(P.412)

 これもあとがきにあるもので、上述のアドバイスの直後に書かれている。しかし、2,000円近いお金を払い、400ページにも及ぶやや脈絡にかける文章を読んできた読者は、この文についてちょっと怒りを感じないだろうか。そもそも、多少の文句や批判があってこそ、そこに議論や意見交換の余地が生じてくるのであって、それを否定しては購入して読んでくれた読者に対しても失礼ではないだろうか。それこそ「こんな本を読むヒマがあったら、日本の将来と自分の将来のことを考えた方が良い」と反論されそうではないか。

次回は、マネジメント社刊、板垣哲史著、「決定版 儲かる米ドル預金 〜プロが実践する外貨資産運用法〜」を紹介します。